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(次ちゃんたら、客間にお通ししたのだわ)  親しい客しか通さない和室に、村井を通したことに夏枝の胸はさわいだ。よほど茶の間にもどろうかと思った。その時、客間で村井の咳ばらいがした。  思いなおして客間のふすまをあけると、黒檀のテーブルを前に村井は端然とすわっていた。 「おるすに上がりまして失礼いたしました」  村井は、しずかに座蒲団をはずしてあいさつをした。とりすました声であった。 「いいえ、こちらこそお待たせいたしまして」  初対面のような村井の作法に、夏枝は戸惑いを感じながらも安心をした。 「おわるいと伺いながら、お見舞いにも上がりませんで……」  村井はさして痩せたようにも見えなかった。 「お見舞いをいただくほどでもありませんが、わがままして、休ませていただくことにしました」  よそよそしい表情で、村井は言葉をくずさなかった。夏枝は、見舞わなかった自分の薄情を責められているような気がした。 「さ、どうぞおらくになさいませ」 「はあ、失礼いたします」  村井は夏枝に何の関心もない、路傍の人のような面もちでいった。 (もう、この人は私を何とも思っていないのだろうか)  とりつくしまもないような、村井の冷たい表情が夏枝にはやはりさびしかった。事件以来むしろうとましくなっていたはずの村井だった。今さっきまで、会うのもおっくうな村井であった。  夏枝は、人に冷たくあしらわれたことが、ほとんどなかった。誰もが、夏枝の歓心を買おうとして愛想がよかった。村井もかつてはその一人であった。今もまだ、そうあるべきであった。村井の変わりように、夏枝は次第に平静を失っていった。もっともひどい侮辱を受けたようにも思われた。  縁側のガラス戸越しに、木の枝が風に大きく揺れていた。
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